相続財産の破産とは 申立ての条件と相続放棄や限定承認との違い

相続財産の破産は、遺産だけでは債務を完済できないときに、裁判所の手続きで清算する制度です。相続人本人の自己破産とは、対象となる財産が違います。
ただし、この手続きを使えば相続人の責任がすべて消えるわけではありません。相続の承認状況と、申立てができる期間を併せて確認する必要があります。
- 遺産の破産と相続人本人の破産は対象が異なる
- 相続放棄や限定承認や相続財産清算人の制度と目的を比べる
- 申立ての期間と固有財産への責任を早期に弁護士へ確認する
相続財産の破産は遺産を裁判所の手続きで清算する制度

遺産で債権者等への債務を完済できないことが出発点
親の預金や不動産を換金しても、相続債権者や受遺者に対する債務を完済できない場合が対象です。破産法223条が開始原因を定めています。
債権者が多数いる場合、一人へ全額返してから残りを考えると、公平な清算が難しくなります。
破産手続きでは、管財人が財産を管理し、法に従って換価や配当を進めます。
相続人の債務を免責する制度ではない
対象は遺産であり、相続人自身の預金や給料を当然に同じ財団へ入れる制度ではありません。一方、遺産の破産が相続人の免責を意味するわけでもありません。
単純承認等で負った債務の責任がどうなるかは、別の確認です。「遺産だけを破産させれば自分には請求されない」と判断しないでください。
相続放棄と限定承認と相続財産清算人の制度を区別する

家庭裁判所の制度と地方裁判所の破産を分ける
| 制度 | 主な目的 | 申立先の区分 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 財産と債務を引き継がない | 家庭裁判所 |
| 限定承認 | 相続財産の限度で債務を負担する | 家庭裁判所 |
| 相続財産清算人の選任 | 相続人の存在が明らかでない遺産等の管理清算 | 家庭裁判所 |
| 相続財産の破産 | 債務超過の遺産の破産手続きによる清算 | 地方裁判所 |
例えば相続人全員が放棄した場合には、相続財産清算人の選任が問題になります。その清算過程で、債務超過の遺産の破産を検討することもあります。
放棄すれば清算の問題がすべてなくなるとは限らない
放棄する人の立場と、遺産から回収したい債権者の立場は違います。相続人がいなくなっても、遺産や債務自体が直ちに消えるわけではありません。
また、放棄時に遺産を現に占有していた人には、一定の保存義務が問題になります。相続放棄後の実家の保存義務も区別して確認してください。
申立人と管轄と申立てができる期間を確認する

債権者と受遺者や相続人等が申立人となる
破産法224条では、相続債権者、受遺者、相続人、相続財産の管理人・清算人、一定の遺言執行者などに申立てを認めています。
債権者等が申し立てる場合は、債権の存在と開始原因となる事実の疎明が必要です。親の最後の住所地等を基準とする地方裁判所の管轄も確認します。
3か月は放棄の熟慮期間と起算が同じとは限らない
破産法225条は、民法941条1項による財産分離の請求ができる期間に、申立期間を結び付けています。
民法941条1項は、相続開始時から3か月以内を定めるほか、その後も相続財産が固有財産と混合していない間の請求を認めています。
さらに、限定承認又は財産分離があれば、債権者等への弁済完了まで申立てを認める特則があります。
いつでも一律に死亡から3か月で終わる、という説明では足りません。
相続放棄の「自己のために相続開始を知った時」からの期間とも区別します。
放棄の熟慮期間を伸ばしただけで、破産申立期間も同じように延びるとは判断しないでください。
財産と債務を残したまま支払いの優先順位を相談する

担保や債権の種類で配当の扱いが異なる
遺産の預金、不動産、売掛金等と、借入れ、税金、保証債務等を一覧にします。担保がある債権と一般の債権では、回収手続きが異なる場合があります。
強く請求してきた相手から順に返済するのではなく、請求書や契約書を保存して相談します。
遺産を勝手に売却・分配すると、返還など別の問題につながることがあります。
親と自分の通帳や支出を分ける
清算の検討中は、親の財産と自分のお金を混ぜないことが大切です。立替えた費用があれば、領収書と支払目的を記録します。
相続財産破産の予納金等は、事件と裁判所により確認が必要です。まず死亡日、相続の承認状況、財産負債の一覧、これまでの支払いを弁護士へ示してください。
よくある質問

相続財産が破産すると相続人も破産者になりますか
遺産を対象とする破産と、相続人自身の自己破産は別です。ただし相続人の債務負担が当然に消えるわけではありません。
相続財産の破産は死亡から3か月後にはできませんか
一律には判断できません。民法941条の財産分離請求期間や、限定承認等の特則を含めて確認します。
先に一部の債権者へ払ってもよいですか
自己判断で支払いを進めず、財産と債務を保存して相談してください。公平な清算や返還の問題が生じることがあります。