相続した家の契約不適合責任 告知書と免責条項を確認する手順

不動産の条件を整理する住まいと土地の資料

親から相続した家に住んだ経験がなくても、売主としてどのような状態の家を引き渡すかは、売買契約で確認する必要があります。「相続した古い家だから」「現状有姿だから」という理由だけで、引渡し後の責任がすべてなくなるわけではありません。

準備するときは、家の状態が分かる資料と告知書、契約書案を一緒に読みます。ここでは個人が事業としてではなく中古の実家を売る場面を想定し、雨漏り修理、防蟻点検、未点検の排水管という架空の三つの記録を使って、記入と照合の順を説明します。

この記事でわかること
  • 修理や点検の資料から告知書へ写す内容
  • 免責する対象と期間に残る確認事項
  • 契約後に分かった不具合を記録へ反映する方法
目次

責任を決める契約案と家の不具合資料を先に並べる

合意の内容を確認する契約書類

契約不適合責任は、引き渡した物が種類、品質、数量などについて契約内容に合っていない場合の売主の責任です。単に古いことではなく、売買でどの状態を約束したかが出発点になります。相続人が現地に住んでいなかったことと、買主に対する契約上の責任の有無は分けて考えます。

買主が求められる対応には、修補などの追完、代金減額、損害賠償、契約解除があります。ただし、どの請求でも同じ要件で直ちに認められるわけではありません。例えば損害賠償は債務不履行の要件も関わるため、売主が知らなかったという事情だけで全ての請求を一括して判断しないようにします。

最初に、仲介会社から受け取った売買契約書案、物件状況報告書や告知書の用紙、家に残っていた修理資料を並べてください。資料は見つかった順に通し番号を付けると、後から説明内容を確かめられます。

資料この例で確認できることまだ分からないこと
D01 屋根修理の領収書2021年に北側の屋根を修理した記録雨漏りの原因と再発の有無
D02 防蟻点検の報告書2023年の報告書に記載された点検範囲と結果対象外の箇所と現在の状態
D03 排水管の確認メモ相続人は点検を依頼していない詰まり、破損、過去の工事の有無

これは照合方法を示す架空例で、実際の点検結果ではありません。D01に工事金額があっても、その金額だけから原因や修理範囲は分かりません。見積書や作業報告書が別にあれば追加し、なければ施工会社への照会が可能かを仲介会社と相談します。

告知書は知っている事実と未確認を分けて記入する

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

告知書の「あり」「なし」「不明」は、家の印象で選ぶ欄ではありません。自分の知る事実、書類で確認できる事実、まだ確認できていない範囲を分けて記載します。書類が見つからないことを「不具合なし」と読み替えないようにしてください。

項目仲介会社へ伝える記入内容の例確認を残す欄
雨漏り2021年の北側屋根修理領収書D01あり。工事内容の詳細資料は未取得修理前の状況とその後の再発は未確認
シロアリ2023年の防蟻点検報告書D02あり。対象と結果は添付資料のとおり点検対象外と現在の状態は未確認
排水管相続後に管内点検をしておらず、過去の工事資料も未発見調査する範囲と依頼先を相談

実際には、仲介会社の用紙の質問と選択肢に合わせて、別紙を付ける方法も確認します。相続したことだけを長く説明するより、場所、発生時期、対応、資料の有無を具体的に示したほうが、買主に何が伝わっているかを確かめやすくなります。

調査の対象外だった箇所を点検済みにしない

報告書が一通あるだけで、建物全体の欠陥が否定されたことにはなりません。D02が床下の限られた範囲の点検なら、屋根や埋設排水管まで検査したと書かないでください。実施日、方法、対象外、立入りできなかった箇所を読みます。

建物状況調査を追加する場合も、依頼する目的と対象を先に合わせます。調査によって分からなかった範囲はそのまま記録し、調査報告書を告知書の代わりにして全ての責任が消えると考えないことが大切です。

免責条項は対象と期間と残る責任を具体的に読む

取引記録を保管するファイルと資料

「現状有姿」は家の状態を表す言葉で、その一語だけから契約不適合責任の免除が確定するわけではありません。責任を免除する特約なのか、責任を負う期間を限定する特約なのかを、条文で確かめます。

契約案で確認する点期間を限定する案責任を免除する案
何を対象にするか建物、土地、設備のどこに適用するか一部設備だけか、種類・品質等の責任全体か
いつまで何を行うか引渡日からの通知期間と通知方法を読む免除されない事項や別の約束を読む
引渡前に判明した問題契約時に約束した修理等との関係を確認引渡前の履行義務まで対象かを確認

表は検討事項であり、そのまま使える特約の文例ではありません。たとえば引渡し後の責任を免除する条項だけでは、引渡し前に判明した排水管の問題について、契約どおりの状態で渡す義務まで免れられるとは限りません。契約案全体との関係を弁護士等に確認してください。

また、免責を合意していても、売主が知りながら買主に告げなかった事実などについては、民法572条によって責任を免れません。D01を発見して雨漏りの修理履歴を知ったのに、告知書を「なし」のままにしてよいわけではありません。

通知の期間と修理の完了期限を混同しない

民法566条の原則は、種類や品質の不適合を買主が知った時から1年以内に、その旨を売主に通知するというものです。「売却から1年で全ての責任が消える」「1年以内に修理を終える」という意味ではなく、請求権の消滅時効とも別の問題です。

引渡し時に売主が不適合を知っていた場合や、重大な過失で知らなかった場合には、この通知期間の制限に例外があります。売主が宅地建物取引業者である取引や新築住宅等では別の法規制も関わるため、個人の中古住宅売却の特約をそのまま流用しないでください。

告知書を更新して契約書と引渡記録へつなぐ

支払内容を確かめる領収書と計算道具

契約書へ署名した後に新しい事実が分かった場合も、まず仲介会社へ具体的に伝えます。例えば、D01の修理箇所付近で新しい雨染みの写真D04を撮ったなら、撮影日と場所、実際に水が入ったかどうかを分けて記録します。写真だけで雨漏りの原因まで断定しないでください。

告知書のv1に何が書かれ、v2でどこを追加したか、買主へいつ説明したかを残します。修理、価格、引渡日の変更などが必要かは協議事項です。買主が了承したと勝手に記録せず、合意内容を確認できる書面を保存します。

残す記録記入する内容
新しく分かった事実D04の写真番号、発見日、場所、確認できた範囲
告知書の変更v1からv2への変更箇所と仲介への連絡日
買主への説明説明日、渡した資料、未回答の質問
引渡条件修理や価格等の合意書面、実施日、未完了事項

相談時にはD01〜D04だけでなく、告知書の各版と売買契約書案をそろえます。家の不具合を伝えた記録と、その状態を前提にどの責任を負うと約束したかを、同じ資料で確認するためです。

売却後の手残りを考える際は、責任の範囲とは別に税金も確認します。相続した家の売却でかかる税金 計算方法と3000万円控除の条件も参考にしてください。

資料の確認や手続きの進め方に迷う場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

相続した家に住んでいなければ契約不適合責任はありませんか

住んでいなかったことだけで免責にはなりません。契約で約束した状態、告知内容、責任を限定する特約などを確認します。

現状有姿で売れば雨漏りの責任もなくなりますか

その言葉だけでは決まりません。免責の対象や期間を条項で確認し、知りながら告げなかった事実は特約があっても免責されません。

点検していない設備は告知書に問題なしと書けますか

点検していないことと不具合がないことは別です。用紙に合わせて未確認の範囲を伝え、追加調査や契約への記載を相談してください。

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