二次相続シミュレーションのエクセル計算手順と入力例

二次相続をエクセルで試算するなら、母が父から受け取る額だけでなく、母自身の財産と将来の支出も入力します。一次と二次の合計税額を比べると、一次の納税がゼロになる案が家族全体でも有利かを確かめられます。
この記事では、父から母と実子へ、その後は同じ実子へ相続する家庭の簡易式を示します。数式と計算例を確認し、土地の特例などがある場合は条件を追加した専門家の試算へつなげてください。
- 二次相続の試算に必要な父母の財産と将来の支出
- Excelへ入れるセルと数式 母の取得割合別の計算例
- 簡易表に反映されない特例と分割前に確認すること
エクセルで試算する前に家族と財産の条件を決める

父の相続と母の相続を同じ条件で比較する
二次相続のシミュレーションは、一次相続で母がどの程度取得するかを変え、二回の税額の合計を比べる作業です。一次相続の税額だけを最小にしても、その財産が母に残れば、次の相続で子の負担が増える場合があります。
ここでは、父が先に亡くなり、母と同じ実子が相続し、その後は母の財産をその実子が相続する家庭を想定します。全員国内居住、子は1〜5人、現金等を中心とし、養子、代襲相続、相続放棄、贈与の加算、各種特例や加算がない条件の概算です。
家族関係や土地の特例が変わる場合は、この簡易式だけでは扱えません。また、遺言や親族の合意を無視して、表の最小税額の割合を実現できるわけではありません。
将来の支出は仮定として区別する
母が亡くなる時期や財産の価値は確定していません。年金等の収入から生活費を差し引いた収支や施設費によって、母の財産は増減します。将来の変動をゼロにした比較と、支出を見込む比較を分けましょう。
例えば「母の生活費2000万円を減らす」と入力するときは、年金で賄える分を既に考慮した純減額なのかを確かめます。同じ支出を二重に引かないため、見積りの根拠と期間も横へ記録します。
父の正味財産と母の固有財産を分けて入力する

金額は万円で統一して税務評価を使う
Excelへ入力する父の財産は、非課税財産や対象の債務・葬式費用などを確認した正味の額です。預金だけでなく、土地、建物、株式、対象の保険や贈与を確認します。簡易式へ入れる前に、課税価格の合計として使える金額を税理士と整理してください。
不動産の売却見込額と相続税評価額は違います。父の評価時点と母の将来の評価も同じとは限らず、価格変動や特例の効果を一つの入力額へ隠すと比較の理由が分からなくなります。
母の財産と取得割合は別の入力欄にする
| セル | 入力するもの | 独自例 |
|---|---|---|
| B2 | 父の正味財産 P | 10000 |
| B3 | 母の固有財産 S | 2000 |
| B4 | 父母双方の相続で同じ子の人数 n | 2 |
| B5 | 父の財産のうち母が取得する割合 r | 50% |
| B6 | 母の将来財産の増減 調整額 | 0 |
B5は「50」と入力せず、50%または0.5とします。B6は生活費などで減るならマイナス、収入や値上がりなどで増えるならプラスです。B2とB3は0以上、B4は1〜5の整数、B5は0〜100%の範囲に入力制限を設定します。
母の固有財産が分からないからゼロにするのではなく、確認済みと未確認を区別します。元の資料に戻れるよう、通帳や評価資料の日付も記録してください。親の財産の調べ方も入力前の確認に使えます。
一次相続は法定割合の仮税額と実際の取得割合を分ける

速算表は各人の仮の取得額へ適用する
相続税は、財産総額に一つの税率を掛けるだけでは求められません。父の正味財産から基礎控除を引き、母と子が法定相続分で取得したと仮定して税額を計算し、その合計を実際の取得割合で配分します。
母と子が相続人なら、法定相続分は母2分の1、子全体2分の1です。子が2人なら一人4分の1になります。母が実際には25%を取得する案でも、最初に家族全体の税額を求める仮定はこの法定割合を使います。
| E列 下限 | F列 税率 | G列 控除額 |
|---|---|---|
| 0 | 10% | 0 |
| 1000 | 15% | 50 |
| 3000 | 20% | 200 |
| 5000 | 30% | 700 |
| 10000 | 40% | 1700 |
| 20000 | 45% | 2700 |
| 30000 | 50% | 4200 |
| 60000 | 55% | 7200 |
この表のE列は昇順に並べます。国税庁の速算表は上限別ですが、ここではVLOOKUPの近似一致用に下限を並べています。境界の金額は隣の税率で計算しても税額が連続するため同額になります。表の並びを変えると正しく検索できません。
仮税額を合計して母の税額軽減を反映する
| セル | 内容 | Excel数式 |
|---|---|---|
| B8 | 父の基礎控除 | =3000+600*(B4+1) |
| B9 | 父の課税遺産総額 | =MAX(0,B2-B8) |
| B10 | 母の法定仮取得額 | =B9/2 |
| B11 | 子一人の法定仮取得額 | =B9/(2*B4) |
| B12 | 母の仮税額 | =B10*VLOOKUP(B10,$E$2:$G$9,2,TRUE)-VLOOKUP(B10,$E$2:$G$9,3,TRUE) |
| B13 | 子一人の仮税額 | =B11*VLOOKUP(B11,$E$2:$G$9,2,TRUE)-VLOOKUP(B11,$E$2:$G$9,3,TRUE) |
| B14 | 一次の相続税総額 | =B12+B13*B4 |
| B15 | 母の実取得額 | =B2*B5 |
| B16 | 母の軽減額 | =IF(B2=0,0,B14*MIN(B15,MAX(16000,B2/2))/B2) |
| B17 | 母の一次納税額 | =MAX(0,B14*B5-B16) |
| B18 | 一次の家族の納税合計 | =MAX(0,B14-B16) |
B16は父の財産が0の場合のゼロ割を避けています。子の人数が0や範囲外の入力では計算を使わず、入力条件を修正してください。正式申告の端数処理は省いているため、この表の額をそのまま申告書へ転記できません。
配偶者の税額軽減は、1億6000万円と法定相続分相当額の多い方までの取得額を基に計算します。母の取得額がその範囲内なら母の税はゼロになっても、子が取得した分の税は残ります。軽減を受けるには申告などの条件も必要です。
母の納税と将来の支出を反映して二次相続を計算する

母の固有財産と父から取得した額を合算する
母の二次相続の財産は、母の固有財産に父から取得した額を足し、母自身が一次相続で納めた税金と将来の変動を反映します。子が払う一次相続税まで母の財産から引くと、誰が負担したかが違う計算になります。
この例では母が一次相続税を自分の資金で支払うと仮定します。母が子の税金も肩代わりする案は、贈与等の検討が必要であり、そのまま同じ式へ含めません。
二次では子だけの人数で基礎控除を求める
| セル | 内容 | Excel数式 |
|---|---|---|
| B20 | 母の二次の正味財産 | =MAX(0,B3+B15-B17+B6) |
| B21 | 二次の基礎控除 | =3000+600*B4 |
| B22 | 二次の課税遺産総額 | =MAX(0,B20-B21) |
| B23 | 子一人の法定仮取得額 | =B22/B4 |
| B24 | 二次の税額合計 | =(B23*VLOOKUP(B23,$E$2:$G$9,2,TRUE)-VLOOKUP(B23,$E$2:$G$9,3,TRUE))*B4 |
| B25 | 一次と二次の合計税額 | =B18+B24 |
二次相続に母の配偶者がいない条件なので、配偶者の税額軽減は使いません。子2人なら基礎控除は4200万円です。父の相続の4800万円をそのまま二次へ使わないでください。
大きなマイナス調整を入れて計算上の財産がゼロになっても、実際の家計が賄えることを示すわけではありません。生活資金の不足を見落とさないよう、調整額の根拠は別に確認します。
母の取得割合を変えて合計税額と生活資金を比較する

同じ入力値で複数の割合を保存する
次は、父の正味財産1億円、母の固有財産2000万円、実子2人、将来の調整0という独自の例です。前述の限定条件とし、財産は現金等で、特例や他の控除・加算は考慮しません。
父の基礎控除4800万円を引いた5200万円を仮に分けると、母2600万円の税は340万円、子各1300万円の税は145万円です。合計630万円を実際の割合で配分し、母の軽減を計算します。
| 母の取得割合 | 一次納税 | 母の二次財産 | 二次納税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 0% | 630 | 2000 | 0 | 630 |
| 25% | 472.5 | 4500 | 30 | 502.5 |
| 50% | 315 | 7000 | 320 | 635 |
| 75% | 157.5 | 9500 | 695 | 852.5 |
| 100% | 0 | 12000 | 1160 | 1160 |
B5の割合を変え、それぞれの結果と入力条件を比較用の表へ記録します。この五つの案では25%の合計が小さくなりますが、全ての割合を検索した最小値ではありません。まして、全家庭の最適割合が25%という意味ではありません。
税額が低い案でも母の暮らしを維持できるか確認する
母が取得しない案でも、母の固有財産や収入で生活できるかは別に検討します。自宅を誰が所有するか、施設費、修繕費、子の支援などを合わせて確認してください。
母の固有財産や将来の調整額を変えると、合計税額の大小が変わることがあります。母が父の遺産を全部相続する場合の生活と分割の考え方も踏まえ、税額と使える資金を両方示すと家族で判断しやすくなります。
土地の特例や相次相続控除は別の条件で試算する

小規模宅地の要件は取得する人ごとに確認する
自宅の土地がある家庭では、誰が取得するかで小規模宅地等の特例の適用が変わります。父の相続で使えた条件を、母の相続でも無条件に引き継げるわけではありません。
別居の子が実家の土地を相続する条件などを確認し、取得者別に土地の課税価格を試算します。同じ入力額のまま取得割合だけを変える簡易表では、この違いを自動的に反映できません。
母に一次の税額がある場合は相次相続控除を確認する
母に一次相続の相続税が課され、その後10年以内に母の相続が始まるなどの要件を満たせば、相次相続控除を確認します。二回相続が起きれば必ず使える制度ではなく、母の前回の課税額や期間などが計算に関わります。
この表には相次相続控除、未成年者・障害者の控除、2割加算、贈与、保険の個別非課税、財産評価や正式な端数処理を自動反映していません。他社の無料Excelも対応範囲が異なるため、表示税額だけを比較せず、入力前提と除外事項を読んで選びます。
税理士への相談には、作った表と、父母の財産資料、家族関係、生活費の見積りを持参します。母の取得割合を変えた理由も示すと、実際に使える特例を含む試算へ進めやすくなります。
二次相続の試算でよくある質問

税額が一番小さい割合で遺産を分けてよいですか
税額だけでは決められません。母の生活費や自宅、家族の合意、遺言と特例の要件も確認します。
母の固有財産を入力しなくても試算できますか
省くと二次相続の財産を過少に計算する可能性があります。母自身の財産を調べ、未確認の項目をゼロとして確定しないでください。
この数式の結果を申告書へ転記できますか
できません。限定条件の概算で、正式な端数処理や各種特例等を省いています。申告には実際の財産評価と適用条件の確認が必要です。
まず父母の財産を別々に整理し、同じ入力条件で母の取得割合を変えてみましょう。比較結果に母の生活資金も添え、実際の分割案を専門家と検討する資料として使ってください。