包括遺贈と特定遺贈の違い 財産・借金・手続きを比べる

包括遺贈は『全財産の3分の1』のように割合で渡し、特定遺贈は『この土地』のように財産を指定して渡す方法です。違いは書き方だけではありません。受取人が引き継ぐ負債や、遺産分割への関与、断る手続きも変わります。
家族以外へ財産を残したい場合は、残す財産と受取人の負担を合わせて考えます。何を渡したいかだけで決めず、借金や担保、将来の財産の変動も含めて遺言案を作ってください。
割合で残す包括遺贈と財産を指定する特定遺贈を比べる

遺言で財産を渡すときは、指定の仕方が受取人の立場を変えます。遺言者の意図と実際の権利義務が合うかを先に確認します。
全財産の3分の1という指定は包括遺贈になる
『全財産を友人へ遺贈する』『遺産の3分の1を団体へ遺贈する』などは、財産全体や割合を対象とする包括遺贈です。対象を一つずつ列挙しなくても、死亡時の財産全体に対する指定になります。
割合で残せば財産の種類が変わっても対応しやすい反面、受取人に分割や負債の問題が生じます。遺言者にとって書きやすいという理由だけで選ばないことが大切です。
この預金やこの土地という指定は特定遺贈になる
『自宅の土地と建物を友人へ遺贈する』など、財産を特定するのが特定遺贈です。どの財産を受け取るかが明確になる一方、物件や口座の表示が正確かを確かめます。
金額を指定した条項や、『相続させる』と書かれた条項などは、遺言全体の解釈も問題になります。『遺贈する』という語があるかだけで全てを分類しないでください。
包括遺贈では受取人に借金や分割の問題も生じる

包括受遺者は相続人と同じ権利義務を有するとされるため、預金や不動産だけでなく負債も確認が必要です。受取人が知らない借金を負う事態は、遺言者の希望ともずれることがあります。
割合に応じた債務の承継も考える
仮に預金900万円と借金300万円があり、その3分の1を包括遺贈する例を考えます。預金の3分の1だけを受け取る説明では足りず、負債の承継も検討しなければなりません。
実際には財産の性質、相続人との関係や指定内容も確認します。単純な差引額を受け取る商品ではないため、『正味財産の一定割合だけで責任は限定される』とは考えないでください。
相続人以外の受遺者も分割に関わることがある
一部を割合で遺贈する場合は、ほかの相続人等と誰がどの財産を取得するかを決める場面があります。相続人以外の団体等を指定するときは、その受取方針と手続きへの対応も確認します。
全財産を一人へ包括遺贈する場合と、一部の割合を遺贈する場合では、分割の必要性が同じとは限りません。受取人の人数や遺言全体から、実際の手続きを考えます。
特定遺贈は指定した財産の状態が受取内容を変える

特定遺贈は指定財産を渡す方法なので、その財産が死亡時にどの状態で残るかが重要です。契約や担保の資料も合わせて確認します。
売却や滅失で指定財産が残らないことがある
遺言で指定した自宅を生前に売った、対象の預金を解約したという場合には、その条項がどうなるかを見直す必要があります。別の財産へ当然に置き換わると期待せず、取得した財産と遺言を照合します。
財産が増えた場合の残りの扱いも決めます。個別指定したもの以外の財産に条項がなければ、遺言で全てが決まらないことがあります。
担保付き不動産を無借金の財産と思わない
特定遺贈では、包括遺贈のように負債を割合で当然に承継する仕組みとは異なります。ただし、住宅ローン等の担保権が付いた物件を、担保のない財産として受け取れる保証にはなりません。
受取人に一定の義務を課す負担付遺贈なども別に検討します。『特定遺贈なら借金も費用も関係ない』と説明せず、担保・維持費・契約上の負担を受取人に伝えます。
受取人が断る場合と税金の違いを先に知らせる

受取人は遺贈を必ず受け入れなければならないわけではありません。ただし、包括遺贈と特定遺贈では、断る方法が違います。
包括遺贈は放棄の期間と家裁手続きがある
包括遺贈の放棄は、相続放棄に準じた家庭裁判所の申述と、原則3か月の熟慮期間を確認します。特定遺贈は原則として遺贈義務者への意思表示を考えますが、催告を受けた場合等の条件もあります。
受取人が負債や管理負担を知らなければ、遺言を知ってから短い時間で判断することになります。生前に話せる範囲で財産の性質や手続きの負担を確認しておくと、意思とのずれを減らせます。
相続税の加算と不動産取得税等を別に見る
個人が遺贈を受ける場合は相続税を検討します。相続税の基礎控除が、法定相続人以外の受遺者だからその人だけ少なくなる仕組みではありません。受取人と遺言者の関係によって、税額の2割加算等が問題になります。
不動産取得税や登録免許税も、包括か特定か、受取人が相続人かなどによって扱いが変わります。家族全体の相続税の計算だけで、受取人が負う税金を全て確認したとは考えないでください。
| 比べる点 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
|---|---|---|
| 財産の指定 | 全部または一定割合 | 個別の財産や利益を指定 |
| 負債との関係 | 相続人と同じ権利義務が問題になる | 包括承継とは別。担保や負担は確認 |
| 遺産分割 | 一部割合の指定などでは関与する場面がある | その指定財産の取得は通常の分割と別に処理 |
| 放棄の基本 | 家裁への申述と熟慮期間 | 遺贈義務者への意思表示。催告等に注意 |
| 遺言見直しの点 | 受取人の責任と全体の割合 | 対象財産の売却・解約・滅失と残余財産 |
遺言案は財産の増減と受取人の負担から見直す

遺言案は、財産の明細と負債を基に、受取人が実行できる内容になっているかを見直します。抽象的な割合指定が便利な場面と、対象を明確にした方がよい場面を分けます。
残りの財産と先に死亡した受取人への備えを決める
受取人が自分より先に亡くなる可能性も考えます。相続の代襲と同じように、その人の子へ当然に遺贈されるわけではありません。代わりの受取人を定める予備的な条項等を検討します。
個別指定と残余財産の条項を組み合わせる場合は、同じ財産が重複したり、受取割合が意図せず変わったりしないかを確認します。財産を売却・購入したときにも案を更新します。
執行する人と受け取る人の役割も明らかにする
遺言執行者を指定する場合は、受取人と執行する人の役割を整理します。慈善団体や法人への遺贈では、受け入れられる財産の種類や換金方法等の事前相談も役立ちます。
最初に渡したい財産、借金と担保、受取人の希望を一覧にしてください。その一覧を専門家へ渡し、割合指定と個別指定のどちらが意思に合うかを確かめます。
財産明細をそろえる段階では、元気なうちに確認する相続準備の書類も役立ちます。遺言の条項と、実際の口座や物件の表示を照合してください。
よくある質問

包括遺贈は預金だけの割合を指定することですか
基本的には財産全体の全部または一定割合を対象とします。プラスの財産だけでなく、受取人に相続人と同じ権利義務が生じる点も確認します。
特定遺贈なら住宅ローンの付いた家でも負担はありませんか
負担がないとはいえません。債務の包括承継とは異なっても担保権や契約上の負担が残り得ます。ローンと担保の資料を確認してください。
受取人が先に亡くなるとその子が遺贈を受けますか
当然には受けません。相続の代襲相続と同じではないため、代わりの受取人を定める条項等を検討します。