現金の生前贈与のやり方を4つの手順で解説 契約書と税金の注意点

現金の生前贈与を示す通帳と契約書

親から子へ現金を生前贈与するには、贈与額と税金の扱いを確認し、親子で合意したうえでお金を渡します。受け取った後は子が管理し、必要に応じて申告・納税を行います。

現金を手渡しする方法もあります。ただ、後から「いつ、誰に、いくら渡したか」を説明しやすいのは、贈与契約書と銀行振込の記録を残す方法です。

この記事では、国内に住む親が成人した子へ、自分の財産として貯めたお金を渡す手順を説明します。金額の決め方から契約書、送金、申告と記録の保管まで、順に確認できます。

この記事でわかること
目次

現金の生前贈与のやり方と4つの手順

現金の生前贈与の手順を整理する資料

生前贈与は、親が「このお金をあげる」と伝え、子が受け取ることに同意して進めます。子名義の口座へお金を移すだけで済ませず、双方の意思と実際の受け渡しを残してください。

親子で進める現金贈与の4手順
手順すること残す資料
1.金額と税制を決める親の生活資金と、子が今年受け取る贈与の総額を確認する贈与額のメモ・過去の申告や届出
2.親子で合意する今年渡す金額・時期・方法を書面にする贈与契約書
3.渡して子が管理する子本人へ送金し、子が自分で使える状態にする振込記録・受領の記録
4.申告と保管をする子が必要な税の手続きを行い、資料をまとめる申告書・選択届出書等の控え

契約書や銀行振込は、贈与が成立するための絶対条件ではありません。口頭の合意や手渡しでも贈与はできますが、記録があれば、親子の認識や税務上の説明を後から確かめやすくなります。

手順1 親の生活資金を残して贈与額と税金の扱いを決める

親の生活資金と贈与資金を分ける資料

渡す額は、親自身がこれから使うお金を分けてから決めます。そのうえで子が今年受け取る贈与を確認し、贈与税をどの制度で計算するかをそろえます。

生活費と医療や介護に必要なお金を先に確保する

年金などの収入で生活費をまかなえるか、預金を取り崩す必要があるかを書き出してください。医療・介護や住まいの修繕など、今後まとまった支出がありそうなら、その分も残します。

子がいつ使いたいかも聞いておくと、渡す時期を決められます。税金の枠を使い切ることより、贈与後も親の暮らしに無理がない金額にすることが先です。

暦年課税の110万円は受け取る人ごとの年間合計が基準

暦年課税は、1月1日から12月31日までに受け取った贈与を合計して税金を計算する制度です。年間合計が110万円以下なら、通常は贈与税の申告・納税は必要ありません。

110万円は、親一人ごとの枠ではありません。例えば、子が同じ年に父から80万円、母から40万円を受け取れば、合計は120万円です。父母それぞれから110万円以下でも、子の受取額で判断します。

ほかの人から受けた贈与や、現金以外に受け取った財産も確認してください。すでに相続時精算課税を選んでいる親からの贈与は、暦年課税と区分して扱います。

110万円を超えるときは贈与税を計算してから金額を決める

暦年課税では、年間の贈与額から110万円を引いた金額に税率を当てはめます。受け取った総額すべてに税率を掛けるわけではありません。

例として、贈与年の1月1日に18歳以上の子が親から現金を受け取り、その年にほかの贈与はないとします。相続時精算課税や個別の非課税特例は使わない場合の計算です。

暦年課税で親から子へ現金を贈与する計算例
年間の贈与額110万円を引いた額贈与税
100万円0円0円
120万円10万円10万円 × 10% = 1万円
200万円90万円90万円 × 10% = 9万円

200万円を受け取った子が、そのお金から贈与税9万円を払うなら、手元に残る額は191万円です。使う予定が決まっている場合は、税金を払う分も残しておく必要があります。

上の税額は贈与税だけの例です。将来の相続税がいくら減るかまでは示していません。大きな額を渡す場合は、親の財産と家族構成も含めて、相続で残す場合と比べてください。

相続時精算課税は初回の届出と将来の扱いまで確認する

相続時精算課税は、贈与時と相続時の税金を通じて精算する制度です。原則、贈与年の1月1日に60歳以上の親から、同日に18歳以上で、その親の相続人になる見込みの子などへの贈与で選べます。

2024年以後の贈与には年110万円の基礎控除があり、その部分は相続税の計算に加えません。ただし、一度選ぶと、その親からの贈与は暦年課税へ戻せません。

初めて選ぶ年は、110万円以下で贈与税申告が不要でも、子が翌年2月1日から3月15日までに選択届出書と必要書類を提出します。申告が不要なことと、選択の手続きが不要なことは別です。

累計2,500万円の特別控除は、期限内に申告すると使える贈与税の控除です。年110万円を超える部分は、原則として相続税の計算に加えます。

今年の少額贈与だけでなく、今後まとめて渡す予定も踏まえて選んでください。

手順2 贈与契約書でその年の親子の合意を残す

贈与契約の合意を残す書面

贈与契約書には、親が何を渡し、子が何を受け取ると合意したかを書きます。書面がなくても贈与は成立し得ますが、後から内容を確認できるよう、その年の合意を書き残す方法を勧めます。

贈与する相手と金額や日付を具体的に書く

現金の贈与契約書に残す内容
記載する内容親子でそろえること
当事者と合意親と子の氏名・住所、渡す意思と受け取る意思
贈与する財産現金の金額
日付と渡し方契約日、贈与の効力が生じる日、送金日・方法
双方の確認内容を確認したうえで署名等を行う

例えば、今年父から子へ100万円を渡すなら、その100万円を対象に、振り込む日と子の口座をそろえます。書面の内容と実際の送金が一致するようにし、双方が控えを持っておきましょう。

税務上、贈与で財産を取得した時期は、口頭なら原則として渡した時、書面なら契約の効力が生じた時です。12月に契約して翌年1月に振り込む場合などは、入金日だけで贈与の年を決めないでください。

100万円を渡す贈与契約書の記載例

例として、2026年10月20日に父が成人した子へ100万円を振り込む合意をする場合を考えます。契約日と効力が生じる日、送金日が同じ設定です。

書面には、その年の一回の贈与を具体的に記載します。下の内容は記載項目の例であり、個別の契約条件をすべて含む完成した契約書ではありません。

現金100万円を贈与する記載例

父[氏名]は子[氏名]に現金100万円を贈与し、子はこれを受け取ることに同意する。

この贈与の効力は2026年10月20日に生じる。父は同日、子本人名義の[金融機関・支店・口座]へ振り込む。

契約日:2026年10月20日
贈与者:父の住所・氏名
受贈者:子の住所・氏名
双方が内容を確認したうえで署名等を行う。

合意した内容と実際の入金額・送金日を照合してください。振込手数料で入金額が変わる場合も、契約書に書いた贈与額と受け渡しの記録を説明できるようにします。

毎年続ける予定でも、この例に翌年以後の給付をまとめて約束する文章は加えていません。将来の予定と、今年すでに合意した贈与を分けて記録するためです。

毎年渡す場合もその年ごとに合意する

毎年贈与するなら、その年に渡すか、いくら渡すかを親子で決めて記録します。毎年同じ100万円でも、各年に独立して合意し、実際に渡していれば、同額というだけで問題になるわけではありません。

一方、最初から「10年間、毎年100万円を渡す」と約束すると、将来お金を受け取る権利自体への課税が問題になります。日付や金額を毎年変えることより、どのような約束をしたかが関わります。

手順3 子へ現金を渡して子が自分で管理できる状態にする

子の口座へ送金するイメージ

合意したお金は、親の口座から子本人の口座へ振り込むと、資金の移動を記録できます。送金後は、子が贈与を受けたことを理解し、自分の財産として管理できる状態にします。

振込も手渡しも現金を渡した記録を残す

銀行振込では、親の出金と子の入金が分かる取引明細を保存します。ネット銀行などで明細の表示期間が限られる場合は、確認できるうちにデータを残してください。

送金の前に、子の口座名義と口座番号、合意した金額を親子で確かめます。銀行ごとに振込限度額などが異なるため、予定日に全額を送れるかも確認しておくと、契約と送金のずれを防げます。

例えば、契約書が100万円の贈与なら、振込明細の金額と子の入金額を照合します。子が「受け取った」と伝えたメールなども併せて残せますが、それだけでなく実際の資金移動を確認してください。

現金を手渡しするなら、子が受け取った日・金額・渡した人が分かる受領の記録を作ります。親の出金や子の入金の記録も添えると、契約書と実際の受け渡しを結びつけて説明できます。

手渡しなら贈与税がかからない、という違いはありません。税金の扱いは、渡し方ではなく、贈与額や選んだ制度などで決まります。

子名義の口座でも親が管理したままにしない

子が口座の存在を知らず、親が通帳やカードを持ってお金の使い道も決めていると、親の財産を子名義で預けた「名義預金」と判断されることがあります。

成人した子への贈与では、子が自分で口座を管理し、お金を使えるようにします。貯めておくことはできますが、親が引き出しを決める状態のまま、名義だけを変えて終えないでください。

通帳を誰が持っているかだけで、贈与の成否が決まるわけではありません。親子の合意や実際の送金、子本人の認識と管理の状況を合わせて確認します。

過去に作った子名義の口座がある場合は、いつ、誰が入金・管理したかを整理してください。実際にはなかった過去の合意を、後から契約書に書き足す方法で済ませないことが大切です。

手順4 子が必要な申告を行って贈与の記録を保管する

贈与の申告と記録の保管

贈与税の申告をするのは、現金を受け取った子です。贈与で財産を取得した年ごとの受取額をまとめ、申告と相続時精算課税の選択届出が必要かを確認します。

申告と納税は原則として翌年2月1日から3月15日まで

今年の現金贈与で確認する税の手続き
贈与の扱い子が確認する手続き
暦年課税で年間合計110万円以下通常、贈与税申告・納税は不要
暦年課税で年間合計110万円を超える原則、贈与税申告・納税が必要
相続時精算課税を初めて選ぶ110万円以下でも選択届出書と必要書類を提出。申告の要否は別に確認
相続時精算課税を選択済み年間合計110万円以下なら申告不要。超える場合は申告が必要

これは2024年以後の贈与を想定した表です。相続時精算課税の110万円は、制度を選んだ複数の親などから受け取る場合も合計で使います。

例えば2026年の贈与について申告が必要なら、期限は原則2027年3月15日です。子の住所を管轄する税務署への提出や、e-Taxを利用します。

申告の準備では、現金をくれた人、取得日、金額を年ごとに整理します。前年以前に相続時精算課税の選択届出をしていないかも、親子の記憶だけでなく控えを見て確認してください。

申告書を提出することと、税金を払うことは別の手続きです。e-Taxなどで申告を終えても、納付が済んだかを確認し、申告の受信通知や納付の記録も保管します。

住宅資金などの非課税特例を使う場合は、税額がゼロでも申告が必要なことがあります。特例を予定しているなら、送金前に適用条件と期限を確認してください。

年110万円以下でも相続税へ加算する場合がある

その親から相続・遺贈や相続時精算課税の贈与で財産を取得する子は、対象期間内に暦年課税で受けた贈与も相続税の計算に加えます。年110万円以下のお金も対象になり得ます。

暦年課税の贈与を相続税に加える期間
相続が始まる日加算の対象期間
2026年12月31日まで死亡前3年以内
2027年から2030年まで2024年1月1日から死亡日まで
2031年1月1日以後死亡前7年以内

2027年1月2日以後の相続では、死亡前3年より前に延びた部分は合計100万円まで加算しません。毎年100万円ずつを差し引く制度ではありません。

相続時精算課税の年110万円の基礎控除部分は、2024年以後の贈与なら相続税へ加算しません。暦年課税と同じ扱いにしないでください。

税金を抑えて子に残すことが目的なら、渡す額だけでなく、贈与税と将来の相続税を合わせて考えます。具体的な比較は、生前贈与と相続はどちらが得か、子に残る額で比べる記事で確認できます。

贈与の記録は契約書から税の資料まで年ごとに保管する

贈与契約書、振込明細や受領の記録、申告書・届出書等の控えを一組にして保管します。申告が不要だった年も、渡した日と金額が分かる資料は残してください。

例えば「2026年の父からの贈与」という一つのフォルダにまとめ、子だけでなく親も送金と合意の控えを確認できるようにします。データは端末一つにだけ残さず、後から読める形式でも保存してください。

ほかの家族からも贈与を受けている子は、受取日・渡した人・金額・税制を一覧にすると、年の合計を確かめられます。控除の範囲内だった年も記録を続けておけば、将来の相続時に過去の贈与を整理できます。

まずは親子で、今年渡す額と使う制度を確認するところから始めましょう。税制の選択に迷う場合や、すでに子名義の口座へ貯めている場合は、その記録を持って税理士等へ確認すると、実際の状況に沿って話を進められます。

現金の生前贈与でよくある質問

現金の生前贈与に関する疑問

現金の手渡しでも生前贈与はできるか

できます。親子で贈与に合意し、受け取った日と金額の記録を残します。手渡しでも、贈与額や制度によって贈与税の確認が必要です。

110万円以下でも贈与契約書は必要か

法律上、書面がなくても贈与は成立し得ます。ただ、110万円以下でも親子の合意を説明できるよう、その年の契約書と送金記録を残す方法を勧めます。

毎年同じ金額を贈与してもよいか

同額というだけで問題になるわけではありません。毎年その都度合意する贈与と、最初から複数年の給付を約束することは、税務上の扱いが異なります。

制度確認:2026年10月10日。個別の申告・届出・特例の適用は、家族や贈与の記録をもとに税務署・税理士等へ確認してください。

相続対策について問い合わせる
目次