マンションの相続税評価額 2024年からの評価方法と必要な資料

親の分譲マンションを相続することになり、固定資産税の通知書を開いた。建物の評価額は見つかったけれど、この金額を相続税の申告書に書いてよいのか迷う。2024年以後の相続では、ここで一つ確認が必要です。
居住用の区分所有財産は、建物と土地の持分を評価したうえで、築年数や所在階などから求める区分所有補正率を適用します。名称は難しくても、資料を集める順番は整理できます。
この記事では、対象になるマンションを確かめ、土地と建物を分けて計算する流れを説明します。評価額がわかった後の小規模宅地等の特例や、申告の判断につながるところまで確認しましょう。
- 2024年からの評価方法が適用されるマンションと対象外の物件
- 建物と敷地持分の評価に区分所有補正率を反映する手順
- 賃貸や小規模宅地等の特例を確認するために必要な資料
マンションの評価は区分所有かどうかで方法が変わる

まず調べるのは、親が持っていたのが分譲マンションの一室なのか、建物一棟なのかです。同じ「マンション」という呼び方でも、登記の状態によって使う評価方法が違います。
2024年以後に取得する居住用の区分所有財産が対象
新しい方法は、2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得する居住用の区分所有財産に適用されます。一室の建物部分と、その部屋に対応する土地の権利を合わせた財産です。相続の場合は、原則として亡くなった日が判断の基準になります。
対象は高層のタワーマンションだけではありません。一般的な分譲マンションも含まれ、親自身の住まいとして使っていたか、賃貸していたかという違いだけで対象から外れるわけではありません。
一棟所有や低層の集合住宅には対象外の条件がある
一方、区分建物の登記がない一棟所有の賃貸マンションや、地下を除いた総階数が2以下の物件などは、この補正の対象外です。居住用ではない事業用テナントや、たな卸商品なども区別します。
居住用の専有部分が3室以下で、そのすべてを区分所有者または親族が住まいとして使う建物にも除外の条件があります。「3室だから除外」と部屋数だけで決めず、実際の利用者まで確認してください。
親が一棟全体を所有していても、すでに各室が区分登記されているケースがあります。一棟所有という日常の説明だけで結論を出さず、登記事項証明書で照合することが大切です。
補正前の評価額を建物と土地の持分に分けて調べる

対象物件とわかったら、いきなり補正率を計算するより、まず建物と土地の元の評価額をそろえます。売買契約書にある購入価格や、不動産会社の査定額をそのまま使う計算ではありません。
建物は固定資産税評価額を出発点にする
自分で使っている建物部分は、原則として固定資産税評価額に1.0を掛けた額を基にします。毎年届く課税明細書の「価格」「評価額」などの欄を確認しましょう。
通知書には課税標準額も記載されていますが、評価額と同じものとは限りません。税額を計算するための調整後の数値を取り違えると、相続税の計算の出発点が変わってしまいます。通知書の表記がわかりにくければ、市区町村で評価証明書を取得して確かめられます。
土地は敷地全体を評価して敷地権の割合を反映する
土地部分は、マンションの敷地全体を路線価方式または倍率方式で評価し、親の部屋に付いた敷地権の割合を掛けます。専有部分が60㎡あるから土地も60㎡と扱うわけではありません。
例えば、敷地全体の相続税評価額が5億円、部屋の敷地権割合が100分の1なら、補正前の土地部分は500万円です。ここでは奥行や形状などの補正をすでに反映した敷地全体の評価額を使うものとします。
敷地が複数の筆に分かれていたり、部屋によって持分が異なったりすることもあります。登記事項証明書にある敷地権の表示と、対象となるすべての土地を対応させてください。借地権付きのマンションでは、土地の所有権とは異なる権利の評価になります。
さらに部屋自体を父母で共有しているなら、親が持っていた共有持分を反映します。「敷地権の割合」と「部屋の所有者としての共有持分」は別なので、二つを混同しないようにしましょう。
区分所有補正率は四つの物件情報から求める

建物と土地の基になる額がそろったら、区分所有補正率を確認します。これは一律に1.5倍、あるいは2倍になるという決まりではなく、その部屋の条件によって変わる倍率です。
| 情報 | 確認する資料と注意点 |
|---|---|
| 築年数 | 建築時から相続時までの期間。1年未満の端数も扱いを確認する |
| 建物の総階数 | 登記事項証明書など。地下を含めない |
| 部屋の所在階 | 登記上の階。複数階の部屋や地下には特別な扱いがある |
| 敷地持分狭小度 | 敷地面積と敷地権割合から求める面積を専有部分の床面積で割る |
評価乖離率と評価水準を経て補正率を決める
四つの情報から評価乖離率を求め、その逆数である評価水準を計算します。この評価水準に応じて、補正をしない場合、評価額を引き上げる場合、引き下げる場合に分かれます。
実務では国税庁の計算明細書を使うと、入力する項目と計算の順番を確認できます。総階数指数や面積には端数処理が定められているため、電卓で出した小数をすべてそのまま使うと結果が一致しないことがあります。
販売図面の面積をそのまま入力しない
敷地持分狭小度の計算では、専有部分の面積が必要です。販売図面には壁の中心線を基準とする壁芯面積が表示されることがありますが、登記の床面積と一致するとは限りません。申告資料にどの面積を使うか、登記の記載と計算明細書を照合します。
築年数も「今年から完成した年を引く」だけで済ませず、相続が発生した日までの期間で確認します。登記に建築年月日が明確でない場合は、管理組合や管理会社に資料の所在を問い合わせると次の調査につながります。
実際の売却価格の6割にする制度ではない
新しい評価を紹介する記事で「市場価格の6割」という説明を目にすることがあります。ただし、購入価格や不動産会社の査定額に0.6を掛ければ相続税評価額になる、という意味ではありません。
補正率は定められた物件情報から計算します。売却価格が変動していても、申告ではまずその計算方法に従って評価を検討します。特殊な取引や著しく不合理な評価が問題となる事案まで、一般的な計算だけで安全性を保証するものではありません。
補正前後の差は建物と土地それぞれに反映する

ここでは計算の順番を確認するため、補正前の建物が1,000万円、土地の持分が2,000万円、計算明細書で求めた評価乖離率が2.5だったと仮定します。特定の物件の実際の補正率を示す例ではありません。
評価水準は1÷2.5=0.4です。0.6未満なので、この条件での区分所有補正率は2.5×0.6=1.5となります。補正前の合計3,000万円に対し、補正後は4,500万円です。
| 財産 | 補正前 | 補正率 | 補正後 |
|---|---|---|---|
| 建物 | 1,000万円 | 1.5 | 1,500万円 |
| 土地の持分 | 2,000万円 | 1.5 | 3,000万円 |
| 合計 | 3,000万円 | ― | 4,500万円 |
増えるのは財産の評価額であり、相続税そのものが1.5倍になるとは限りません。他の財産や債務、法定相続人の数、誰が取得するかによって税額は変わります。増加した評価額に特定の税率を掛けるだけでは、家族全体の税額はわかりません。
なお、一定の区分所有形態では土地の補正率に下限があるなど、個別の取扱いも定められています。通常の一室の例を、全室と敷地を単独所有するケースにそのまま当てはめないでください。
賃貸の評価と小規模宅地等の特例は補正後に確認する

区分所有補正率を反映したら、親がその部屋をどのように使っていたかを確認します。賃貸していた物件と、親の自宅だった物件では、この後に検討する事項が異なります。
貸していた部屋は契約と入居状況も調べる
貸家や貸家建付地として評価する場合は、補正後の建物と土地の額を基に、借家権割合や賃貸割合などを検討します。所有者が「賃貸物件」と呼んでいるだけでは足りず、相続時の契約や実際の入居状況が資料になります。
空室があった場合にも、すべて同じ扱いになるとは限りません。退去から募集までの経緯や、一時的な空室に該当する事情などを確認します。賃貸借契約書、家賃の入金記録、募集資料をまとめておくと、評価の判断に必要な事実を説明できます。
自宅の土地の減額を建物へ広げない
自宅だったマンションでは、土地の持分について小規模宅地等の特例を検討できます。特定居住用宅地等なら限度面積330㎡まで80%の減額ですが、亡くなった人の利用状況、取得する人、保有や居住の条件などを満たす必要があります。
先ほどの例で、補正後の土地3,000万円の全部が80%減額の対象になると仮定すると、土地は600万円になります。建物1,500万円はこの特例では減らないので、合計は2,100万円です。ここでも実際の面積要件や相続人の条件を省略した仮定として見てください。
別居の子が取得する場合や、親が老人ホームに入っていた場合には確認する条件が増えます。別居の子と小規模宅地等の特例、老人ホーム入居後の自宅の扱いで、家族の状況に合う条件を先に整理しましょう。
申告の検討はマンション以外の財産もそろえて進める

評価額を調べる作業は、税額の計算に進むための準備です。マンションだけで申告の要否を判断せず、預貯金、有価証券、他の不動産、生命保険、債務なども合わせて確認してください。
資料が足りない場合は所在と取得先を分けておく
登記事項証明書、相続時の年度に対応する固定資産評価の資料、敷地の所在地がわかる図面、建築時期の資料を一か所にまとめます。複数の土地にまたがるマンションなら、土地の一部だけを調べて終わらないように一覧にします。
管理組合から何を取得できるか、法務局でどの登記を取るか、自治体でどの証明を請求するかを分けておけば、家族で資料集めを分担できます。住宅ローンが残っている場合は、残高だけでなく団体信用生命保険で返済されるかも確認し、同じ債務を二重に扱わないようにします。
10か月の期限までに特例の申告要件も確かめる
相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。ただし、小規模宅地等の特例で税額がなくなるケースでも、特例を使うための申告が必要になることがあります。
相続税の申告・納付期限は、通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。資料集めや家族の話し合いが続いているからといって、当然に期限が延びるわけではありません。補正率の資料が不明な段階でも、申告が必要かどうかを早めに税理士へ相談できます。
他の財産の所在から調べる場合は、親の財産がわからないときの調査方法も役立ちます。まず全体像をそろえ、マンションの評価と申告の判断を同じ資料でつなげていきましょう。
共有のマンションは物件全体と故人の持分を分けて示す
父と母で所有していたマンションなら、建物全体の資料だけでなく、父が所有していた割合も必要です。母自身の持分は、父の相続財産ではありません。
敷地権の割合は住戸に対応する土地の権利を示し、住戸を家族で共有している割合とは別です。二つの割合を同じものとして扱うと、土地の持分を重複して掛けたり、父の持分を反映し忘れたりします。
登記事項を確認するときは、住戸、敷地権、父の共有持分を分けて担当者へ伝えます。資料を一つの封筒にまとめるだけでなく、どの情報が何の計算へ使われるかも確認すると、評価明細を読みやすくなります。
マンションの相続税評価でよくある質問

新しい評価方法はタワーマンションだけに適用されますか
いいえ。一定の除外を除き、一般的な居住用の分譲マンションも対象です。区分登記や総階数などで確認します。
一棟所有の賃貸マンションにも補正率を掛けますか
区分建物の登記がない一棟所有の物件は、この補正の対象外です。区分登記されている場合は別途確認が必要です。
購入価格の6割を相続税評価額にしてよいですか
できません。土地と建物を評価し、物件情報から求めた区分所有補正率を反映します。購入価格に0.6を掛ける計算ではありません。